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切通理作
2017.1.25 09:26

「殺戮」は不適切か

 

有識者会議は「特例法許容」メンバー以外いなかったとのことですが、噛めば噛むほど味が出ると御厨貴氏が言っていた論点整理の全文を読むと、ひと噛みで「一代限り」ありきのエキスがにじみ出してきて、思わずえずいてしまいました。

 

ここには皇位の安定的継承という本質論が影も形もなく、それこそが天皇陛下の求める国体の維持であることに背を向けたものでしかありません。

 

最近新聞に掲載された全文採録と言えば、安倍首相の施政方針演説と同じ日に掲載されたトランプ米大統領就任演説がありますが、こちらの方には、「その通り」と膝を叩きたくなる<筋>がありました。その<筋>とは、グローバリズムのままでは、既得権益層以外の国民にとっては自らが殺戮されているのと同じだと言い切るということです。

 

日本のジャーナリズムでも、「殺戮」という言葉が汚い言葉だと批判している向きもありますが、そんなことを対岸の火事のように言っている我々自身が、グローバリズム下で殺戮されかかかっていることに気付かないのはどうかしているでしょう。

 

この日たまたま私が聞いていたラジオで、トランプには世界平和への意識がなく、自国のための内向きの演説をしているとキャスターがバカにしたように語っていましたが、まず自国第一に考えることは本質論でしょう。

 

「私たちは世界中の国々との友好と親善を求めます。しかし、私たちがそうするのは、すべての国々が自己の国益を第一に考えるという理解のもとにです」という言葉は、胸のすくように感じられました。

 

その考えで、自国製品を購入し、自国人を雇用するという基本。

これがなくなったら、どの国の国民も、殺戮されていくしかないのです。

 

昨日配信の「小林よしのりライジング」を読みました。

自由貿易でグローバル競争をしていけば、何がもたらされるのかという考察が抜け落ちたまま、たとえばパート女性の時給を上げろなどといっても、まったく無意味であるという小林さんの主張は明快です。

 

安倍首相の施政方針演説を見ても、地方再生や中小企業における、局所的にポテンシャルの高い成功例をフレームアップし、「言葉より実行」の美名のもと、目先で人をごまかすような言葉ばかりが並んでいます。

 

なにがごまかされているのか。それは「殺戮」です。

国体の殺戮、国民の殺戮。

それは汚い言葉ではありません。

放置したままではいけない本質なんです。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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